従業員を雇用する事業者にとって、社会保険・労働保険の手続きと管理は必須の業務です。適用範囲・保険料の計算・手続き方法など、中小企業経営者が理解しておくべき基礎知識を解説します。
目次
社会保険・労働保険の種類と概要
| 保険の種類 | 管轄 | 対象者 | 保険料負担 |
|---|---|---|---|
| 健康保険 | 全国健康保険協会(協会けんぽ)または健康保険組合 | 正社員・一定条件のパート | 会社と従業員で折半(各約5%) |
| 厚生年金保険 | 日本年金機構 | 正社員・一定条件のパート | 会社と従業員で折半(各約9.15%) |
| 介護保険 | 全国健康保険協会(健康保険に付随) | 40歳以上の健康保険加入者 | 会社と従業員で折半(各約0.9%) |
| 雇用保険 | ハローワーク(公共職業安定所) | 週20時間以上・31日以上の雇用見込み | 会社が多め・従業員が少なめ |
| 労災保険 | 労働基準監督署 | 全従業員(パート・アルバイト含む) | 全額会社負担 |
社会保険(健康保険・厚生年金)の適用
社会保険の強制適用・任意適用の条件
- 強制適用事業所:法人(株式会社・合同会社等)はすべて加入義務あり。個人事業主は常時5人以上の従業員がいる場合(農業・飲食等一部除く)
- 2024年10月から適用拡大:従業員51人以上の企業で週20時間以上・月収8.8万円以上(年収106万円以上)・学生でない場合は加入
- 2024年改正で「年収の壁」対策として支援強化措置が導入され、130万円の壁対応も行われている
社会保険料の計算方法
- 標準報酬月額に保険料率を掛けて算出(毎年4〜6月の報酬を基に7月に改定)
- 健康保険料(協会けんぽ・東京):標準報酬月額×約10.00%(会社・従業員各5.00%)
- 厚生年金保険料:標準報酬月額×18.30%(会社・従業員各9.15%)
- 賞与からも同様の保険料が徴収される(標準賞与額に同じ料率をかける)
労働保険(雇用保険・労災保険)の手続き
労働保険の年度更新(毎年6月1日〜7月10日)
- 前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を申告・納付する手続き
- 労働保険料:全賃金総額×労働保険料率(業種により異なる。製造業0.95%・小売業0.90%等)
- 毎年6月1日〜7月10日が申告・納付期限(電子申告e-Govも利用可能)
雇用保険の手続き
- 資格取得届:従業員採用後10日以内にハローワークへ届出
- 資格喪失届:退職・解雇後5日以内に届出(離職証明書の交付も必要)
- 雇用保険料率:会社負担1.55%・従業員負担0.6%(2024年度・一般事業の場合)
労災保険の手続き
- 業務上の傷病・通勤災害が発生した場合、労働者死傷病報告書を労基署へ提出
- 保険給付の申請は従業員本人または事業主が行う(療養補償給付・休業補償給付等)
- 労災かくしは厳罰の対象。軽微に見えても必ず適切に対処する
社会保険・労働保険の最近の改正ポイント(2024〜2025年)
主要な法改正・変更点
- 社会保険の適用拡大:2024年10月から51人以上の企業に適用(2024年から100人超から変更)
- 育児介護休業法改正:2024〜2025年施行で育児休業の取得促進・柔軟化が強化
- 労働条件明示の義務化:2024年4月から就業場所・業務内容の変更範囲を書面明示が義務化
- 割増賃金の引き上げ:2023年4月から中小企業も月60時間超の時間外労働に対し50%以上の割増賃金が義務化
よくある質問
Q. 社会保険料を節約することはできますか?
A. 合法的な節約方法として、役員報酬の水準を適切に設定する・定期同額給与の活用・年金事務所への確認などが挙げられます。ただし、保険料を不当に回避することは法令違反となります。社会保険料の削減を過度に強調するコンサルタントには注意が必要です。
Q. パート・アルバイトの社会保険加入はどこまで必要ですか?
A. 2024年10月以降、従業員51人以上の企業では週20時間以上・月収8.8万円以上・学生でないパート・アルバイトも健康保険・厚生年金の加入が義務です。基準を下回る場合でも、週30時間以上や正社員の3/4以上の勤務時間になると加入義務が生じます。
まとめ
社会保険・労働保険は従業員を守るための法定制度であり、正しく手続きを行うことが事業者の義務です。適用拡大・法改正が続いているため、社会保険労務士(社労士)と連携して最新の情報を把握し、手続きミスや法令違反を防ぐ体制を整えましょう。